エントリとしてまとめるのにちょっと時間が経ってしまったけれど、備忘録もかねて書き連ねることにする。
この本は、IT分野を中心に活動を続けているジャーナリストである著者がITmediaの連載「レコメンデーションの虚実」のインタビューをもとに『インフォコモンズ』と名付けた氏のコンセプトを描き出して見せたものである。
ITmediaの連載は、興味深く拝読していたので、書籍に出てくる個々の話題については、「インフォコモンズ」という論点に合わせて再構成されているとはいえ、すでに読んだ内容が多く新鮮味は薄かったけれども、印刷されて一つにまとめられた書籍として網羅的にまとめられているという点で、インターネットと情報通信技術の革新によるコミュニケーションとコミュニティの形成と現実社会に与える影響と未来といったテーマを考える際の起点として俯瞰的に状況を理解するにはよい本だと思った。
情報共有圏(インフォコモンズ)、中間共同体(マジックミドル)など、特徴的なルビの振り方はややもすれば読みづらいものも散見されるが、ニュアンスとして日本語よりも英語で表現した方が著者の真意が表現しやすい(=日本語で概念を表現しにくい)ということなのかもしれない。
著者は、情報共有圏(インフォコモンズ)を本書P.26にて下記のように定義している。
情報アクセスをもっと簡単に、しかも個々のユーザーにとって的確に行えるような方法はないだろうか?膨大な情報に対する効率的なアクセス手段としての検索エンジン、そしてその先にあるものとして、情報洪水にしめる割合が拡大した、日記、雑談、ブログなどの個人的で雑多な情報、ユーザーの暗黙行動のトラヒックなど、今日のインターネット上に多量に流通しているコンテキストをふまえて、情報共有圏(インフォコモンズ)という考え方をもとに、この先に現れるであろうものを予想しようと試みている。
その問題解決を模索する中で、インターネットの世界でひとつの新しい構造が生まれようとしている。人が情報を収集する時、どのような枠組みの中で情報を収集するのかという、その文脈(コンテキスト)を特定していこうという考え方である。
ただしこの情報アクセスの文脈(コンテキスト)の概念について、いまのところそれを的確に呼ぶ言葉はない。そこで本書では、その概念を、
「情報共有圏(インフォコモンズ)」
と呼ぶことにしたい。
その手がかりとして、以下の4つの条件を示して、具体的な事例や動向を丁寧に紹介・検討している。
- 暗黙(インプリシト)ウェブである。
- 信頼(トラスト)関係に基づいた情報アクセスである。
- 情報共有圏(インフォコモンズ)が可視化されている。
- 情報アクセスの非対称性を取り込んでいる。
この書籍で紹介されている事例を含めて、自身でより探求してゆくことで自分なりの考えを整理できればと思う。
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